脂質異常症

脂質異常症とは、中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝に異常が発生している状態のことをいいます。脂質の異常には、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常があります。これらはいずれも、動脈硬化を促す要因となります。

脂質異常症の原因

家族性で元々高い人もいますが、一般的には過食、運動不足、肥満、喫煙、アルコールの飲み過ぎ、ストレスが関係していると言われています。

LDLは、お肉や揚げ物の脂が多い食事などで高くなります。食事の欧米化によって野菜の摂取量減少や植物性蛋白の摂取量低下も関係しています。
HDLは、運動不足や内臓脂肪が多い肥満で低下するとされています。
中性脂肪は、糖質系の脂と言われていて、お菓子の過剰摂取や果物、アルコールによって上昇していきます。


脂質異常症の診断基準

脂質異常症の診断基準は図表のとおりですが、この基準に当てはまる場合でも、すぐに治療が必要というわけではありません。

項目基準値診断
LDLコレステロール140mg/dL以上高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール40mg/dL未満低HDLコレステロール血症
トリグリセライド

150mg/dL以上(空腹時採血)

175mg/dL以上(随時採血)

高トリグリセライド血症

日本動脈硬化学会、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版、一般社団法人日本動脈硬化学会:東京.2022.


脂質異常症の症状

脂質異常症そのものには特に自覚症状はなく、痛みなどを感じたりすることはありません。


脂質異常症を放っておくと

自覚症状がないため、放っておく人が多いのですが、適切な処置をしないとどんどん動脈硬化が進行してきます。動脈硬化によって動脈の柔軟性が失われると、血液の流れに合わせてスムーズに動脈が伸縮できなくなり、高血圧の原因になるほか、ある時、突然、脳の血管や心臓の血管が詰まってしまい、脳梗塞や心筋梗塞を起こし、命の危険に繋がることもあるのです。


脂質異常症の検査

動脈硬化の進展具合は、心筋梗塞など病気を発症して病院で精査を受けた人以外は、多くの場合、そのかたの動脈硬化がどのような状況かはなかなかわかりません。ふらつきなど、脳循環不全の症状のある方などでは、現在の動脈硬化の程度を頸動脈エコー等で検査することも可能で、参考になります。当院でも頸動脈エコーを実施して動脈硬化の評価をしております。


脂質異常症の治療

脂質異常症治療の基本は、生活習慣の改善です。
食事と運動それぞれの面において適切な指導を行うことで、コレステロールや中性脂肪を正常値へと近づけます。生活習慣が原因の脂質異常症であれば、食事・運動療法だけでも正常に戻ります。
しかし、多くの方が生活習慣だけでは数値が下がらないのが現実です。
その場合はやはり薬物療法を考える必要があります。
すでに動脈硬化性疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)に罹患した人、あるいは動脈硬化がある人(下肢動脈の動脈硬化症、大動脈瘤、脳動脈硬化症)、およびこれから進展しそうな方(高血圧のあるかたとか、糖尿病のかたとか喫煙者とかメタボの人など危険因子のある方)は、目標とするLDLコレステロールレベルを低く設定し、生活習慣の改善で達成しない時は、服薬を勧めるということになります。
治療目標は、最新のガイドラインでは心筋梗塞など冠動脈疾患の既往症のある方では70mg/dlをできれば目指すということになっています。一方でコレステロール以外に何も問題のない、60歳までのかたは、160mg/dl以下を目標とします。
重要なのは個々人によって目標が変わります。