慢性心不全は、「慢性心不全は様々な原因による心筋の障害により、心臓のポンプ機能が低下し、末梢臓器への有効な血流に障害をきたし、日常生活に支障を及ぼす様態」と定義されています。
「足がむくむ」、「動くとすぐに息切れがする」、「夜に横になると苦しくなる」
心不全はポンプの働きが悪くなって、身体の循環が滞り、身体に水分がたまっていきます。
その結果、「足がむくむ。体重が増える。胸に水が溜まって息苦しい。」などの症状がでてきます。
ひどい状態だと呼吸苦が強くなり、酸素投与が必要となります。
心不全の原因はいくつかあります。
代表的なものとしては、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心筋症(高血圧性、拡張型心筋症、心筋肥大症)、不整脈、弁膜症などがあります。
それぞれ原因に合わせて適切な治療を行う必要があり、原因精査が重要となります。
心臓の状態を把握するのにはいろいろな種類の検査があります。
代表的なものだけ記載します。
・胸部レントゲン写真
心臓の大きさや胸水を評価することができます
・心電図検査
心臓の電気信号を読み取ることで、心筋梗塞や不整脈などがないか調べます
・採血検査
NT-proBNPを含めた採血検査で心不全の程度を判断いたします。また、心疾患をもつ患者は腎機能、肝機能に影響を及ぼしていることがありますので多臓器障害がないか判断いたします。
図 心不全のリスクとステージ分類
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
心不全は多くの心臓疾患が最終的に到達する症候群です。
上記の通り、急性増悪というものを繰り返して徐々に悪くなっていきます。
半年以内に再入院を繰り返すような状態はいわゆるステージD(末期心不全)の状態といえます。
心不全というのは癌や認知症などと同じように付き合っていかなければいけない病気の一つで、適切な治療を行わないとその生命予後は悪いことが言われています。
本邦および欧米における慢性心不全ガイドラインに則って、心不全のステージにあった適切な治療が行っていきます。
主な薬物治療は以下のとおりです
・利尿剤
身体にたまった水分を尿から排泄させます。
・降圧薬(レニン・アンジオテンシン系阻害薬、カルシウム拮抗薬)
降圧薬と聞くと高血圧の人が飲むものと考えがちですが、血圧のためだけでなく、心臓の保護のためにも重要です。
・β阻害薬
心臓の脈を抑える働きがあります。特に心機能が低下した患者に対して、心臓を保護して生命予後を伸ばします。
・その他(抗血栓薬、抗不整脈薬、経口血糖降下薬、腎保護薬)
心不全を増悪させないこととして重要なこととして、しっかりと内服することや検査を受けることだけではありません。
塩分制限(身体に塩分を貯めないこと)が重要です。
塩分を取ることで身体に水がたまります。水分の制限よりも塩分制限の方が重要となります。自宅に帰って再入院する患者さんの多くが入院中よりも塩分を摂取していることが多いのです。
また、身体の負担は心臓の負担となります。風邪などの感染症、過度な運動、長時間の入浴・サウナ、肥満、アルコール多飲など日常生活で気をつけなきゃいけないことは多々あります。
生活習慣病(高血圧、脂質異常症など)に対する予防医療から循環器専門疾患(心筋梗塞後、心房細動などの不整脈、慢性心不全など)まで幅広く患者様のニーズに合わせて治療を行っていきます。
また、カテーテル検査・治療やCT画像検査・核医学検査などの追加精査加療が必要な患者様を適切なタイミングで高度医療センターにご紹介させていただきます。